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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

映画から見た著作権法(改訂版)

はしがき


 現行の著作権法(1971年1月1日施行)は、その目的を、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」(1条) と規定し、?著作物に関わる著作者の権利と、?実演、レコード、放送及び有線放送に関わる、著作者の権利に隣接する権利(これを「著作隣接権」という)の二種類の権利の保護をうたっています。換言すれば、著作権法は、二つの法律を一つにまとめたものと言うことができます。  このページでは、前者すなわち「著作物に関わる著作者の権利の保護に関する法律」としての著作権法を、もっぱら映画の視点から見て、思いっきり単純にまとめました。  この改訂版は、1990年の版をその後の法改正にあわせて改訂したものです。


1999年4月

目 次
1著作物
2著作者
3著作者人格権
4著作権に含まれる権利の種類
5映画の著作権の帰属
6著作権の制限
7保護期間
8著作権の譲渡及び消滅
9裁定による著作物の利用
10補償金
11登 録
12紛争処理
13権利侵害
14罰 則

 1 著作物
◆著作権法が、著作物に関わる著作者の権利の保護というとき、当然に著作物の存在が前提になっています。では、著作物とは何でしょうか。著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(2条)と定義し、さらに、「おおむね次のとおりである」(10条)と具体的に例示しています。
 ◇小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物(事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は該当しない)
 ◇音楽の著作物
 ◇舞踊又は無言劇の著作物
 ◇絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
 ◇建築の著作物
 ◇地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
 ◇映画の著作物
 ◇写真の著作物
 ◇プログラムの著作物
 なお、「(データベース以外の)編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの」も著作物として保護されます(12条)。
 もし或るものが著作物であるかないかで争われる場合は、裁判所が判断することになります。

◆次の著作物は保護の対象になりません(13条)。
 ◇憲法その他の法令
 ◇国又は地方公共団体の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
 ◇裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行なわれるもの
 ◇以上のものの翻訳物及び編集物で、国又は地方公共団体の機関が作成するもの

◆「映画の著作物」と例示にあるとおり、映画は著作物であり、伝統的ないわゆる映画(フィルム)は疑問の余地はないわけですが、ビデオはどうなのでしょうか。著作権法は「〈映画の著作物〉には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、ものに固定されている著作物を含むものとする」(2条)としていますので、生放送は映画ではありませんが、ビデオテープやビデオディスクもまたれっきとした映画の著作物です。 

◆著作権法による保護の対象となる映画は、次のとおりです(6条)。
 ◇日本国民(日本国の法令に基づいて設立された法人および日本国内に主たる事務所を有する法人 を含む)の映画
 ◇最初に日本国内において発行された映画(最初に日本国外において発行されたが、その発行の日 から30日以内に日本国内において発行されたものを含む)
 ◇条約により日本国が保護の義務を負う映画(日本国が加入している著作権の国際条約はベルヌ条 約と万国著作権条約ですが、両条約とも、いずれかの加入国の国民の映画、いずれかの加入国で最初に発行された映画は保護の義務を負い、さらにベルヌ条約では、非加入国の国民でいずれかの加入国に常居所を有する者の映画、いずれかの加入国に主たる事務所または常居所を有する者が製作者である映画も保護の義務を負います)
  「発行された」とは、公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が適法に作成され、頒布された場合を言います。

 2 著作者
◆映画が著作物であることは分かりましたが、では、著作者とは誰なのでしょうか。著作権法は、「著作物を創作する者をいう」(2条)と規定し、さらに映画の著作者だけは特別に規定を設けて、「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない」(16条)としています。換言すれば、映画の著作者はプロデューサー、監督、演出者、カメラマン、美術デザイナー等、その映画の全体的形成に創作的に寄与した者であり、原作者、脚本家、音楽家などは映画の著作者とはしない、ということです。ここでちょっと気になるのが「美術等」の「等」です。現行法公布時に文化庁がその解説書として作成した『新しい著作権法の概要』(以下『概要』といいます)は「〈美術等〉の等には特殊撮影の監督などが含まれ、助監督、カメラ助手等は含まれない」としています。
「等」の説明に更に「など」が出てくるという具合で、結局、この16条はアイマイな規定と言わざるを得ません。

◆但し書きの「前条の規定」とは、「法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」(15条)という規定です。これは例えば、政府刊行の出版物等は使用者である国が企画をたて、そのイニシャティブのもとに従業者である公務員が職務上の義務として創作し、国自体の名義で公表されますが、このような場合その著作者は使用者である国とする、というものです。『概要』は「ニュース映画等で、もっぱら会社の著作名義の下に公表されるもの」 についてはこれが適用されるとしています。ということは、一般の映画には適用されないということです。ですから、この規定を拡大解釈して、著作者が社員の場合は映画会社が著作者であると主張しても、それは著作権法が否定していると考えていいでしょう。 

◆映画の著作者とはしないとされた「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者」というのをちょっと注釈しますと、「翻案」は「小説」「脚本」にかかり、「複製」は「音楽」にかかります。「その他の著作物」というのは、小説以外の言語の著作物が原作となることもあり(この場合は翻案)、応接間のセットに飾った絵(著作物)がうつることもあります(この場合は複製)。これらの著作物の著作者は映画の著作者ではありませんが、映画の利用に対しては権利が及びます。ただし、「屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物」と「建築の著作物」は、映画にうつっていても、その著作者の権利は及びません。

◆この映画の著作者の規定は、著作権法の施行前に創作された映画には適用されません(附則4条)。

 3 著作者人格権
◆著作権法は、著作者は「著作者人格権」と「著作権」を享有し、その享有には「いかなる方式の履行をも要しない」(17条)と規定しています。
 まず著作者人格権から見ていきます。これは著作物に関わる著作者の人格的権利で、「著作者の一身に専属し、譲渡することができない」(59条)権利です。著作権は他の財産権と同様に譲渡することができますが、著作者人格権は譲渡の対象にはなりません。なお、著作者人格権は著作者の死亡とともに消滅しますが、著作者の死後においても、著作物を公衆に提供し、又は提示するものは「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」(60条)と規定して、著作権法は永久にその人格的利益を保護しています。ただし、「その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない」(同条但し書き)ことになっています。
 著作権法は、このような性格をもつ著作者人格権として、
 ◇公表権
 ◇氏名表示権
 ◇同一性保持権
 の三つを規定しています。

◆最初の[公表権](18条)とは、著作物で「まだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利」です。公表するか、しないか、を決める権利と思えばいいでしょう。しかし、映画の著作権が29条によって映画製作者に帰属した場合は、著作者は公表に同意したものと推定することになっていますので、多くの場合、映画の著作者にはこの権利は無いのと同じと言っていいでしょう。

◆次の[氏名表示権](19条)とは、著作物を公表する際に、著作者としてその氏名を著作物に(映画ではタイトルに)表示する、又は表示しないこととする権利です。表示する氏名を実名とするか、変名(芸名その他)とするかも、著作者の意思で決めることができます。もっとも、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる」ことになっています。

◆最後の[同一性保持権](20条)とは、「著作物及びその題号の同一性を保持する権利」で、著作者の「意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない」というものです。ただし、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」については適用しないことになっています。改変するほうの立場から言えば、何らかの事情でやむを得ず改変するのでしょうから、これを拡大解釈すれば、事実上同一性保持権など無いと同じことになってしまいます。この点について『概要』は「真にやむを得ない場合において必要最小限度許容されるものとして、厳格に解釈、運用されるべきであり、いやしくも拡大解釈等が行われてはならない‥‥たとえば劇映画をテレビ放映するに際し必要となる短縮、再編集等までをやむを得ないと認められる改変として著作者に無断で行いうるものとするものではない」と注意しています。不可抗力による改変はやむを得ないが、人為的改変は認められないのだという統一解釈にしたいものです。そうすれば無用の紛争を招くこともなくなるでしょう。

◆なお、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす」ことになっています(113条)。 

◆共同著作物の著作者人格権は、共同著作者全員の合意がなければ行使することができませんが、各著作者は信義に反してこの合意が成ることを邪魔することはできません。また、共同著作者はそのうちから著作者人格権を行使する代表者を決めることができます(64条)。
 この規定はあくまで著作者人格権の「行使」についての規定であって、著作者人格権の侵害に対しては、各著作者がそれぞれ差止請求などの措置がとれることになっています(117条)。

 4 著作権に含まれる権利の種類
◆著作権法は、著作権には次の諸権利が含まれると規定しています。
 ◇複製権
 ◇上演権及び演奏権
 ◇公衆送信権等
 ◇口述権
 ◇展示権
 ◇上映権及び頒布権
 ◇貸与権
 ◇翻訳権、翻案権等
 このうち映画の場合に日常的に働いているのは◇複製権◇公衆送信権等◇上映権及び頒布権、でしょう。

◆最初の[複製権](21条)とは、映画を「複製する権利」です。複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法で有形的に再製すること」(2条) ですから、フィルムであれ、ビデオテープであれ、ビデオディスクであれ、映画のすべての複製物をつくるときに働きます。

◆次の[公衆送信権等](23条)とは、映画を無線や有線で送信を行う権利(いわゆる放送や有線放送はこれに含まれます)と、それらを受信して公に伝達する権利です。

◆最後の[上映権及び頒布権](26条)とは、映画を公衆に見せる目的で上映したり、映画の複製物を頒布する権利です。頒布とは「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与すること」(2条)です。この権利は、映画に複製されている音楽や美術の著作物の著作者にもあります。

◆映画を適法に翻案して創られる二次的著作物(戯曲や小説等)もあり得ますが、どう料理されても仕方がないというわけではなく、それには当然、著作者人格権が及びますから、もし著作者の名誉又は声望を害するような場合はもちろん、著作者の意に反して人格的な利益を損なう場合は権利侵害とみなされます(113条)

◆映画の著作権者は、その映画を利用したい他人に利用を許諾することができます。その許諾を得た人は、許諾された利用方法と条件の範囲内でその映画を利用することができます。その許諾された映画を利用する権利は、その映画の著作権者の承諾なしでは譲渡することができません。映画の放送や有線放送での利用についての許諾は、契約で特別に決めてなければ、その映画の録音や録画の許諾を含んでいないことになります(63条)。

◆共同著作物の著作権その他共有に係る著作権は、共有者全員の合意によらなければ行使することができませんし、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡したり質権の目的とすることができません。これらの場合、各共有者は、正当な理由がない限り、合意の成立を邪魔したり、同意を拒んだりすることはできません(65条)。

 5 映画の著作権の帰属
◆著作者は「著作者人格権」と「著作権」を享有する(17条)と、前にありました。 そうすると、映画の著作権は16条に掲げられたプロデューサー、監督、演出者、カメラマン、美術デザイナー等の共同著作者が有するのかというと、実はそうはなっていないのです。映画だけが、他の著作物とは違って、この原則が適用されません。著作権法29条は次のとおり規定しています。
  「映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する」(1項)
  「もっぱら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第15条第1項の規定の適用を受けるものをのを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該放送事業者に帰属する。(1)その著作物を放送する権利及び放送されるその著作物を有線放送し、又は受信装置を用いて公に伝達する権利(2)その著作物を複製し、又はその複製物により放送事業者に頒布する権利」 (2項)
  「専ら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第15条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該有線放送事業者に帰属する。(1)その著作物を有線放送する権利及び有線放送されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利(2)その著作物を複製し、又はその複製物により有線放送事業者に頒布する権利」(3項)

◆1項は、映画の著作者が映画製作者とその映画の製作に参加することを約束しているときは、その映画の著作権の全部が映画製作者に帰属する、というものです。映画製作者とは、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」(2条) です。「製作に参加することを約束しているときは」とは、参加契約をしているときは、と言い換えれば分かりやすいと思います。契約は必ずしも契約書の作成を必要としません。口頭でも契約は成立します。したがって、仕事を引き受けてしまえば、契約書がなくても参加契約をしたと認められ、その映画の著作権の全部が映画製作者に帰属してしまいます。この規定は、黙っていれば著作権の全部が映画製作者へいってしまいますから、そのことを十分わきまえて、参加契約で納得のゆくようにしておきなさいよ、と言っているわけです。このことを、『概要』は「著作者が参加契約等において、映画製作者に帰属することとなる著作権の行使につき条件を付すこと等を妨げるものでないことは、もとよりである」と言っています。
 もっと具体的に言いましょう。担当料には著作権使用料が含まれているということです。したがって、映画製作者に帰属することとなる著作権の行使につき参加契約で条件を付けておかない限り、担当料をもらうことで総て終わりです。映画製作者がその映画をどう利用しようと、経済的には著作者とは無関係になってしまいます。

◆2項は、もっぱら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画については、著作権のうちの放送に関する権利(放送する権利、放送されるその映画を有線放送したり受信装置を用いて公に伝達する権利、複製したりその複製物により放送事業者に頒布する権利)のみが放送事業者に帰属する、というものです。ここで注意しなければならないのは、放送事業者が映画会社等と共同製作する映画は1項の適用を受けるということです(『概要』)。したがって、現在ほとんど下請けで作られているテレビ用映画といわれるもの(ビデオ作品も)は、この2項には該当せず、1項の映画ということになります。つまり、その著作権は映画製作者の方に帰属するわけです。
 では、この2項の映画とは具体的にはどういうものなのでしょうか。素直に読めば、放送事業者が放送だけを目的として(当事者がそういう認識で)作った映画ということでしょうが、(もちろんそういうものもあるでしょうが)、その典型的なものは、44条の規定で作成される放送のための一時的録音・録画物だとされています。その規定とは、「放送事業者は、第23条第1項に規定する権利を害することなく放送することができる著作物を、自己の放送のために、自己の手段又は当該著作物を同じく放送することができる他の放送事業者の手段により、一時的に録音し、又は録画することができる」というものです。「第23条第1項に規定する権利」とは、公衆送信権です。つまり、放送事業者は、適法に放送できる著作物を、自己の放送に使うためなら、自己の手段や、同様に適法に放送できる他の放送事業者の手段によって(業者に委託する場合は含まない)自由に一時的に録音・録画することができることになっているのです。

◆3項は、有線放送事業者も放送事業者に準じた権利を有することを規定したものです。

◆著作権法の施行前に創作された映画の著作権の帰属については、なお従前の例によることになっています(附則5条)。

 6 著作権の制限
◆著作権法は、著作権の制限について次の諸規定を設けています。
 ◇私的使用のための複製
 ◇図書舘等における複製
 ◇引用
 ◇教科用図書等への掲載
 ◇学校教育番組の放送等
 ◇学校その他の教育機関における複製
 ◇試験問題としての複製
 ◇点字による複製等
 ◇営利を目的としない上演等
 ◇時事問題に関する論説の転載等
 ◇政治上の演説等の利用
 ◇時事の事件の報道のための利用
 ◇裁判手続等における複製
 ◇翻訳、翻案等による利用
 ◇放送事業者等による一時的固定
 ◇美術の著作物等の原作品の所有者による展示
 ◇公開の美術の著作物等の利用
 ◇美術の著作物等の展示に伴う複製
 ◇プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等

 このうちの[私的使用のための複製][引用][学校教育番組の放送等][営利を目的としない上演等][時事の報道のための利用][放送事業者等による一時的固定]について、映画の場合を簡単に要約することにします。

◆[私的使用のための複製](30条)
 映画は、個人的に使う目的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内(例えば少人数の親密な友達の集まり)で使う目的の場合には、使う人が自由に複製することができます。放送される映画をビデオテープに複製するなどです。この場合、その複製物を使う本人が自分で複製を行わなければなりません。
 なお、政令で定めるデジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器で録音又は録画を行う場合は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければなりません。

◆[引用](32条)
 公表された映画は、引用して利用することができます。といっても、公正な慣行に合致しており、かつ、報道、批評、研究その他の引用する目的からみて正当な範囲でなければなりません。

◆[学校教育番組の放送等](34条)
 公表された映画は、学校内における教授の補助手段として用いられる学校向け放送・有線放送番組で放送・有線放送することができます。その場合、そのことを著作者に通知する必要があり、著作権者に相当な額の補償金を支払わなければなりません。

◆[営利を目的としない上演等](38条)
 公表された映画は、(1)営利を目的としないこと?観客から対価を受けないこと(2)実演家等に報酬が支払われないこと、の3要件が満たされた場合には、自由に公に上映することができます。
 また、放送される映画は(1)営利を目的としないこと(2)対価を受けないこと、の2要件が満たされた場合には、自由に有線放送することができます。
 また、放送・有線放送される映画は、(1)営利を目的としないこと(2)観客から対価を受けないこと、の2要件が満たされた場合には、受信装置を使って自由に公衆に伝えることができます。普通の家庭用受信装置を使ってする場合でも同じです。
 また、映画フィルムや視聴覚資料を公衆に利用させるために作った営利目的でない視聴覚教育施設(政令で定めるもの)は、無料ならば、公表された映画の複製物を自由に貸し出すことができます。その場合、その映画の上映権、頒布権をもっている者と原著作者に相当な額の補償金を支払わなければなりません。

◆[時事の事件の報道のための利用](41条)
 写真、映画、放送その他の方法で時事の事件を報道するときには、その事件を構成している映画またはその事件の過程で見られたり聞かれたりする映画は、報道の目的からみて正当な範囲で、複製してその事件の報道に伴って利用することができます。

◆[放送事業者等による一時的固定](44条)
 放送事業者は、適法に放送することのできる映画を、放送のために自己の手段または同様にその映画を放送することができる他の放送事業者の手段で、一時的に録音・録画することができます。
 また、有線放送事業者も同じように自己の手段で一時的に録音・録画することができます。
 これらの一時的固定物は、録音・録画の時から6ケ月(6ケ月以内に放送・有線放送が行われたときは、その時点から6ケ月)を超えて保存することができません。ただし、政令で定める公的な記録保存所で保存する場合は別です。

◆以上の[引用][学校教育番組の放送等]の場合には、出所を明示しなければなりません(その映画が特定できる必要があり、最低、「題名」と「著作者名」の明示は必要)。複製以外の[引用][営利を目的としない上演等]で慣行がある場合も、出所を明示しなければなりません。

◆著作権が制限される多くの場合に、「公表された」ということが要件の一つになっていますが、?公衆の要求を満たすことができるだけの部数の複製物が適法に作成され、頒布される(すなわち発行される)か?適法に上映、放送あるいは有線送信の方法で公衆に提示された場合に、その映画は公表されたことになります。

◆著作権の制限の規定は、著作権のみを制限するものであって、著作者人格権までが制限されるわけではありません。

 7 保護期間
◆映画の著作権は「公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかったときは、その創作後50年)を経過するまでの間、存続する」(54条)ことになっています。映画を創作してから50年経っても公表しないと、そこで著作権は切れてしまいますが、49年目に公表すると、そこから50年間著作権は生きることになります。

◆著作権の保護期間は、著作者の生存間および死後50年間が原則(51条)ですが、映画、団体名義の著作物、著作者不明の著作物などは、公表後50年間となっています。「死後」、「公表後」というのは、死んだ日から、公表した日から、ということではなくて、実際の計算は、死んだ年、公表した年の翌年の1月1日からそれぞれ起算することになっています。したがって、著作権が切れるのはすべてある年の12月31日ということになります。

◆映画の著作権が期間満了で消滅したときは、「当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権」も消滅します(54条)。つまり、映画の著作権が切れると、その映画の原作や脚本等の著作者のその映画の利用に関する権利もまた同時に切れてしまうわけです。(この規定は、映画に複製されている音楽や美術の著作物の著作権には適用されません)。

◆著作権法の施行前に公表された映画については、旧著作権法による保護期間のほうが長い場合は、その保護期間によることになっています(附則7条) 。
 旧著作権法による映画の保護期間は、「独創性を有するもの」は一般の著作物と同じ、「独創性を欠くもの」は写真と同じ、となっています。後者は発行後(発行しないときは種板製作後)13年ですから簡単に確定できますが、前者すなわち普通の映画は、映画の著作者が同法では誰なのか不明なので、個々の映画について保護期間を確定することは簡単なことではありません。もし仮に、映画の著作者を現行著作権法に準ずるという考え方をとったとしますと、共同著作者のうちの最後に死亡した者の死後38年になります。

 8 著作権の譲渡及び消滅
◆映画の著作権は、全部でも一部でも譲渡することができます。
 その譲渡契約で、その映画を翻案する権利や原著作者が有する映画の利用に関する権利が譲渡の目的として特に掲げられていないときは、これらの権利は譲渡した者の方に残っているものと推定することになっています(61条)。

◆映画の著作権は、 次の場合には、消滅し、自由な利用に委ねられることになります(62条)。
 ◇映画の著作権者である人が死亡した場合、相続財産であるその映画の著作権が最終的に処分されずに残ったため、民法の規定で国庫に帰属することとなるとき。
 ◇映画の著作権者である法人が解散した場合、その映画の著作権が最終的に処分されずに残った ため、民法その他これに準ずる法律の規定で国庫に帰属することとなるとき。

◆映画の著作権が存続期間の満了で消滅したときは、その映画の原著作物(原作や脚本など)の著作権のうちその映画の利用に関する権利も消滅しますが(54条)、映画の著作権が著作権者の死亡や解散の結果消滅することとなったときも、その映画の原著作物の著作権のうちその映画の利用に関する権利は消滅します(62条)。

 9 裁定による著作物の利用
◆すでに公表された映画や相当な期間にわたって公にされている映画は、著作権者が分からなかったりその他の理由で、努力はしたがどうしてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受けて、同長官が定める額の補償金を供託すれば、裁定が決めた利用方法で利用することができます。
 その裁定によって作成した映画の複製物には、裁定に係る複製物であることと裁定の年月日を表示しなければなりません(67条)。

◆すでに公表された映画を放送しようとする放送事業者は、その映画の著作権者に放送の許諾について協議を求めたが、その協議が成立しなかったときや、その協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受けて、同長官が定める額の補償金を著作権者に支払って、その映画を放送することができます。
 こうして放送される映画は、有線放送したり、受信装置を用いて公に伝達することができます。この場合は、その有線放送を行う者や伝達を行う者は、自由利用の規定(38条)の適用がある場合以外は、通常の使用料の額に相当する額の補償金をその映画の著作権者に支払わなければなりません(68条)。

 10 補償金
◆文化庁長官が補償金の額を決める場合には、政令で定める審議会に諮問しなければならないことになっています(71条)。

◆文化庁長官の裁定による著作権者不明等の場合の映画の利用や映画の放送で、同長官の決めた補償金の額が不服な当事者(著作権者および利用する者)は、裁定のあったことを知った日から3月以内に、その額の増減を求める訴えをおこすことができます(72条)。

◆著作権者不明その他これに準ずる理由で訴えを起こすことができない場合は、行政不服審査法による異議申し立てができます(73条)。

◆裁定による映画の放送で補償金を支払わなければならない者は、次の場合は、補償金を供託しなければなりません。

 ◇著作権者が補償金の受取を拒否するか、受取ることができない場合
 ◇過失がなくて、著作権者を確知できない場合
 ◇補償金額不服の訴えを起こした場合(著作権者の請求があるときは、
   自分の見積金額を支払い、補償金との差額を供託)
 ◇当該映画の著作権を目的とする質権が設定されている場合
 供託をした者は、そのことを速やかに著作権者に通知しなければなりません(74条)。

 11 登 録
◆[実名の登録](75条)
 無名または変名で公表された映画の著作者は、その著作権を有するかどうかに関係なく、その映画について実名の登録を受けることができます。
 この登録は、死後、遺言で指定した者によっても受けることができます。
 実名登録されている者は、その映画の著作者と推定されます。

◆[第一発行年月日等の登録](76条)
 著作権者または無名あるいは変名の映画の発行者は、その映画について第一発行年月日の登録または第一公表年月日の登録を受けることができます。
 この登録がされている映画については、登録されている年月日に最初の発行または最初の公表があったものと推定されます。

◆[著作権の登録](77条)
 次のことは、登録しなければ、第三者に対抗することができません。
 ◇映画の著作権の移転(相続や会社合併などによる一括的承継によるものを除く)または処分につい ての制限
 ◇映画の著作権を目的とする質権の設定、移転(前項同様に一括的承継によるものを除く)、変更あるいは消滅(債権・債務が同一人に帰したことによる消滅、担保する債権の消滅による消滅を除く)または処分についての制限 

 12 紛争処理
◆著作権法が規定する諸権利に関する紛争について、あっせんによってその解決をはかるために、文化庁に著作権紛争解決あっせん委員会が置かれています。
 その委員は、事件ごとに関係学識経験者のうちから3人以内を、当事者の意向をきいて、文化庁長官が委嘱します(105条)。

◆紛争当事者は、文化庁長官に対し、あっせんを任意に申請することができます(106条)。

◆あっせんの申請には手数料の納付が必要です(107条)。

◆紛争当事者の双方からあっせんの申請があったとき、または一方から申請があり他方が同意したとき、あっせんにかけられます。
  しかし、事件がその性質上あっせんになじまないと認められるとき、または不当な目的で申請したと認められるときは、あっせんにかけないことが出来ることになっています(108条)。

◆委員は、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めなければなりません。
 しかし、解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることが出来ることになっています(109条)。

◆委員は、あっせんが終わったときは、そのことを文化庁長官に報告しなければなりません。
 あっせんを打ち切ったときは、そのことと打ち切りの理由を、当事者に通知するとともに、文化庁長官に報告しなければなりません(110条)。

 13 権利侵害
◆差止請求権(112条)
 ◇映画の著作者、著作権者は、その著作者人格権、著作権を侵害 する者又は侵害するおそれのある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができます。
 この請求をするに際し、「侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物又はもっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求すること」ができます。
 ◇共同著作物の著作者人格権、共有著作権は、それぞれ著作者全員、共有者全員の合意によらなければ、行使することができません(64条、 65条)が、この差止請求権または損害の賠償の請求あるいは不当利得の返還の請求は、他の著作者、他の著作権者の同意を必要としません(117条)。

◆侵害とみなす行為(113条)
 ◇次に掲げる行為は、映画の著作者人格権、著作権を侵害する行為とみなされます。
  1.輸入の時に国内で作成したとしたならばこれらの権利の侵害となる行為によって作成された物を輸入する行為。
  2.これらの権利を侵害する行為によって作成された物(輸入に係るものを含む)を情を知って頒布し、または頒布の目的で所持する行為。
 ◇映画の著作者の名誉または声望を害する方法によりその映画を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなされます。

◆名誉回復等の措置(115条)
 ◇映画の著作者は、故意または過失によってその著作者人格権を侵害 した者に対して、損害の賠償に代えて、または損害の賠償とともに、著作者であることを確保し、または訂正その他著作者の名誉もしくは声望を回復するために適当な措置を請求することができます。

◆著作者の死後における人格的利益の保護のための措置(116条)
 ◇映画の著作者の死後においては、その人格的利益を害した者またはするおそれがある者に対して、遺族が差止請求、名誉回復等の措置を請求することができます。
 ◇請求することができる遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序です。ただし、著作者が遺言でその順位を別に定めた場合は、その順序です。
 ◇映画の著作者は、遺言によって、遺族に代えて差止請求、名誉回復等の措置の請求をすることができる者を指定することができます。この場合、著作者の死後50年経過した後は請求することができません。もっとも、50年経過する時点で遺族が存在している場合は、遺族が存在しなくなるまでは請求することができます。

 14 罰 則
◆映画の著作者人格権、著作権を侵害した者は、
 ◇3年以下の懲役または300万円以下の罰金(119条) 。これは親告罪ですから、本人の告訴(6ケ月以内)が必要です。

◆映画の著作者の死後において、その人格的利益を害した者は、
 ◇300万円以下の罰金(120条)。

◆映画の著作者でない者の氏名を表示した映画の複製物を頒布した者は、
 ◇1年以下の懲役または100万円以下の罰金(121条)。

◆出所明示が必要な場合にそれを怠った者は、
 ◇30万円以下の罰金(122条)。


《「映画から見た著作権法」追補1》

 その後の改正事項

【著作権に含まれる権利の種類】2000年1月1日から
 ◇「譲渡権」(注)を映画以外の著作物に認める。この権利は1複製物に1度 しか及ばないから、適法に譲渡された複製物を第三者に再譲渡することは自由である。(26条の2)
  (映画の「頒布権」はそのまま維持)
  (注)著作物を複製物等の譲渡という形で公衆へ提供する権利。
 ◇「上映権」を映画以外の著作物にも認める。(22条の2)

【著作権の制限】1999年10月1日から
 ◇私的使用を目的とする複製であっても、技術的保護手段(注)の回避によって可能となった複製はできない。(30条)
  (注)技術的保護手段とは、著作物等の無断利用等を技術的に防ぐ手段であり、「コピープロテクション」と呼ばれる場合もある。

【権利侵害】1999年10月1日から
◆権利侵害とみなす行為
 ◇権利管理情報(注)の改変等を行う行為及びその行為が行われた著作物等について頒布、輸入、所持、公衆送信、送信可能化する行為。(113条)
  (注)権利管理情報とは、著作物等に付された著作物等に関する情報で著作権等の管理に用いられているものをいう。

【罰則】1999年10月1日から
◆(1)技術的保護手段の回避を可能とする行為を行った者、(2)(こちらは親告罪で)営利目的で権利管理情報の改変を行った者は、
 ◇1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(120条の2)


《「映画から見た著作権法」追補2 2001.4.1》

 その後の改正事項

【罰則】2001年1月1日から
 ◆法人の代表者(法人格を有しない社団または財団の管理人を含む)または法人や人の従業者が業務に関し、罰則で定められている違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、
 ◇その人に対して当該各条の罰金刑を、
 ◇その法人に対して次の罰金刑を科す。
 (1)権利の侵害(著作者人格権に係るものを除く)については、1億円以下の罰金。
 (2)著作者人格権に係る侵害や侵害罪以外の罪については、当該各条の罰金。(124条)

【著作者人格権の制限】2001年4月1日から
 ◇次の場合は氏名表示権を適用しない。
 (1)情報公開法・情報公開条例(以下「情報公開法等」)の規定によって著作物を公衆に提供・提示するとき、既に著作者が表示しているところに従って著作者名を表示する場合。
 (2)情報公開法等の規定による部分開示(注)のとき、著作者名の表示を省略する場合。(19条)
   (注)部分開示とは、個人の識別に関する情報を削除してする開示。
 ◇情報公開法等で「公表権」も制限を受ける(18条)が、映画の場合は、著作権が29条で映画製作者に帰属したとき、著作者は公表に同意したものと推定 されるので、今回の改正で新たな影響を受けることはないものと思われる。

【著作権の制限】2001年4月1日から
 ◇情報公開法等の規定によって著作物を公衆に提供・提示することを目的とす場合には、開示するために必要と認められる限度でその著作物を利用することができる。(42条の2)
 ◇この場合に作成された複製物は、開示目的以外の目的で使用することはできない。(49条)

このページは日本映画監督協会顧問、柿田清二氏の執筆によるものです。
無断で複写、転載することを禁じます。


映画から見た著作権法(改訂版)
発行所 協同組合日本映画監督協会 Directors Guild of Japan
発行日 1999年4月10日
連絡先 協同組合日本映画監督協会事務局
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FAX:03-3461-4457